警備員の収入における出鱈目な記事やフェイクニュースに騙されないでください

嘆かわしい実態 警備員

あまりにも酷い記事を見掛けましたので注意喚起の一環として取り上げておきます。

それが「月収50万円!?警備員のアルバイトが嘘みたいに稼げる理由(ttps://keiichinishimura.com/security-staff-job/)」という個人ブロガーの提灯記事(※1)です。

※1:正確には、アフィリエイト広告用クリックベイト記事です。
クリックベイト記事なのでURLのアンカーリンクは外しております。

個人ブロガーの記事を敢えて取り上げた理由は、特定キーワードによる検索結果で上位表示されており、警備業未就業者の方に誤った認識を与えかねない為です。

現役の警備員の皆さんや経験者の方であれば、記事タイトルを見ただけで“釣り記事”であると見抜けるでしょうが、警備業未経験者でこれから警備員になろうとしている皆さんにとっては、期待に胸を膨らませるような魅惑的な記事名ではないでしょうか?

当該記事の概要とその事実内容を紐解く

まず、当該記事は基本的に警備員(ガードマン)という職種を、おすすめのアルバイト、として紹介している記事です。
おすすめのアルバイト先としているのは全く問題ありません。
当会も、オススメ、しております。

さて、当該記事の公開日は「2017/04/11」、最終更新日が「1019/02/27」です。
それ程、昔の記事、という訳ではありません。

基本的に当該記事に書かれていることは一概に、間違っている、とは言えません。
と言うのも、当該ブロガーの方は、2号業務(交通誘導業務)のアルバイト経験があるようです。
学生の時とありますから、2004年~2007年+α(※2)、くらいの時期に就業したであろうことが推測されます。
実際の就業時期は上記の通りですが、記事に書かれている数字に関しては、2017年当時(正確には平成28年度末)の“アルバイト求人サイト”にあった求人項に書かれていたであろう数字から、推測、して書いている創作記事であることが分かります。

筆者であるブロガーが2号警備を経験したのが大学生の頃とのことから平成16年~19年(+α年[※2])と考えられ、第2次小泉内閣から福田康夫内閣の頃と想定されます。
日経平均株価は小泉構想改革で11,000円辺りから上昇し、2007年初頭には18,000円台となり、年末時点でも15,000台でした。

+α」としているのは、浪人や留年を考慮したからではありません。
後述する「内勤」項をご確認ください。

推測による創作記事であろうことの証明は、給料や日給保障の相場、入社祝い金、そして何より“勤務日数に応じたボーナス”というものが、明らかに記事公開日の2017年4月、正確には2016年10月以降、マンパワーに頼った2号業務に比重を置いた警備会社が実施した“1ヶ月当たりの総勤務総数による手当” 支給に他ならないからです。

なお、現在では本手当は見受けられません。
仮にあったとしても、それは短時間労働者に限られるはずです。
もし、短時間労働者に限らず、いまだに本手当を一律支給している警備会社にお勤めの方は、当会にまでご通告ください(2020年4月以降、一律で本手当を支給している場合、36協定違反の可能性が濃厚ですから、ぜひ、ご報告ください)。

2016年度の交通誘導員が多数を占める「他に分類されない保安」の有効求人倍率は全国で33.7倍、東京都内に限ると99.9倍となり、外勤現場における欠員不足を補う為、最低賃金が公開される10月の賃上げ際、警備員一人当たりの勤務日数の上昇を図り、月当たりの総勤務数に応じた手当の支給に踏み切った。
この安直な采配は当然、長時間労働推奨というブラック化を益々増長させ、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」提出以前の2017年度後期の時点で厚生労働省の先読みで是正措置を求められ、約1ヶ年という短期間で本手当は消滅した。

何より、記事タイトルにある月収50万円については、記事内では「昼夜連勤をして月に50万・年収600万円以上稼ぐ者もいる」と触れられていますが、これが如何にも眉唾、正直あり得ません
確かに、民主党政権以前のサブプライム住宅ローン危機やリーマン・ショック前の株価上昇安定期に大学生による長期休暇を利用した短期就業や新卒時期にフリーターを選択した一部の非正規労働者による連勤に次ぐ連勤で高収入を達成する者はおりましたが、それでも当時、40万強というのが限界です。

ブログ筆者が就業していたであろう時期の2号業務におけるアルバイトの場合、昼夜連勤で残業を伴わない時、日給2万円には遠く及びません。
1勤務当たり9時間拘束が基本ですから、1日当たり18時間拘束のぶっ通しで23日前後以上の連勤、あるいは僅かな半日休暇を挟んでの働き詰めで漸く40万以上の月収となる計算です。

机上の空論として、月収50万円は可能としても、年収600万円を吹聴している者がいるとすれば、最早それはペテン師以外の何者でもありません。

ちなみに、入社祝い金は以前からチラホラ見掛けますが、当該記事に記載されている「5万円」という額面が見受けられるようになったのは、2015年後期が最初期です。

当該ブロガーは、内勤も経験した、と記載してます。
これは凡そ、真実、だと思われます。

その理由は、優遇される隊員、として幾つか事例を挙げているのですが、その中に「現場が遠い/該当現場には生きなくない等、我が儘を言わない者」と綴っています。

お分かり戴けますでしょうか?
はい、彼は内勤としてオペレーター(管制・配置)業務に就いていたのでしょう。
遠方の現場への勤務や特定現場への就業を断る外勤者を“わがまま”と切って捨てるのは、管制業務に就いていた者の特徴の一つです。


そして、資格取得を勧めています。
その理由が、一生ものの資格、と。これが典型的です。
確かに、検定資格は一生ものですが、検定資格取得で最もメリットがあるのは、警備会社、つまり、使用者です。
有資格者の現任教育が必須となります。これは正社員/非正社員、内勤/外勤の違いはありません。
2019年8月30日の警備業法施行規則の一部改正により現任教育の教育時間が短縮されましたが、それ以前は教育時間が比較的長く、本教育に要する時間の為、通常業務に支障をきたす傾向が強く、使用者としてはこの教育時間による本業務へのタイムロスを軽減させる為、特に内勤者に対し、検定資格の取得を勧める訳です。

警備業にまつわる資格の全ては国家資格ですから、確かに一生もの、です。
しかし、警備業に就業しない場合、全く無意味ですし、また、警備業に就業するに際しても、個人事業主でもない限り、どこかの警備会社に所属しなければなりませんし、2級の場合、必ず業務別教育を受講する必要があります。
世間的な認知度は皆無ですし、警備業界の、その中でもかなり限定された現場環境でなければ意味をなさない資格である為、他の国家資格と比較した場合、資格取得の必然性は薄れます。

注目すべきは、内勤も経験、とあることです。
正社員として警備会社に就職した場合、内勤を経験、となるはずです。
内勤も経験、とは即ち、外勤経験者。時期的に考えて、また、当人も記している通り、アルバイト採用として外勤に従事し、後、内勤、つまり、正社員として雇用されたことがある、という意味になります。
より以前であれば、正社員として雇用されても現場欠員を補填する為に外勤することもしばしばでしたが、この場合、外勤も経験、となるはずです。

これが何を意味するのか、お分かり戴けますでしょうか?
アルバイト(非正規雇用)として警備員(ガードマン)を勧めており、記事タイトルで高収入を謳っているにも関わらず、なぜか当該ブロガー本人は、より安定的な収入を得る為に内勤(正社員)を選択しているのです。

実に、おかしな話※3)、です。

※3:これはあくまでも推測です。
恐らく、彼は卒業後も警備員であり続けたのだと思います。そして、民主党政権時の警備業界大不況を味わったのでしょう。
この時期、公共事業予算が2割近く削減され、2号警備のクライアントが大打撃を被り、結果的に現場数の激減に繋がり、外勤者がシフトを入れても現場がない状況になりました。
これをクリアする為、最も手っ取り早いのが内勤者、即ち、低収入であっても固定給で安定的な収入を得ることのできる正社員としての採用、だったのでしょう。

外勤(アルバイト)で高収入を得られるのであれば、内勤(正社員)になる必要性を感じないはずです。特に、当該ブロガー筆者は当時、若い訳ですから。
しかし、そうはしなかった。
つまり、高収入を獲得していた訳ではない、と推測されるのです。

当該記事に潜む悪質性と病変

ここまで十分、当該記事とその筆者であるブロガーの背景を紐解いてまいりましたが、なぜ、ここまで詳細な分析をしてまで個人ブログを取り上げるのか?
それは、本人が思っている以上に当該記事が“悪質”だからです。

当該記事が、単なるアルバイト求人サイトのアフィリエイト記事、だけであったとしたら、そこまで問題ではありません。
問題なのは、当該ブログ筆者に警備員としての実体験と経験があり、且つ、凡そ本人は気付いていないであろうパワハラとモラハラを、実に悪意の欠片もなく、サラリと綴っていることにあります。

これが警備業界に潜む、根深いブラック性なのです!

労働者の意見・主張を『わがまま』と切って捨てる恐ろしさ

先述した通り、当該ブログの筆者は、内勤として管制業務に就いています。
しかも、アルバイトとして入社後、外勤経験を経てから内勤に就いています。
即ち、警備業界において、非正規雇用者としても正規雇用者としても、また、外勤も内勤も経験している訳です。

それぞれの立場にあり、それぞれの立場を知っているのも関わらず、時系列的に警備会社に就業していた最終期が内勤の正社員であった為なのか、非正規雇用の外勤者を使役するにおいて、明らかなパワハラ発言をごく自然に提言しているのです。

ワガママを言うな』、と。

しかも、一番大事なものとして“現場の好き嫌いを言わない”こと、としています。
こんな出鱈目な言い分、今の世の中、なかなかお目にかかれません!

当該ブログ筆者は、警備会社の選び方として“会社の場所が家から近い”とアドバイスをしています。
しかし、 舌の根の乾かぬうちに現場が遠い」と我が儘言うな、と記載しています。
一体、どういうつもりなのでしょうか?

彼は内勤社員の立場・目線から、色々とその理由を書いておりますが、その中に「警備会社の収入源は隊員なので社としては一人でも多くの隊員を現場配置したい」と述べています。

一体、何を言っているのでしょうか?いや、何が言いたいのでしょうか?
会社の収入源が労働者である隊員一人ひとりであると理解しているのであれば、その収益を上げる為に必要不可欠となる労働者である隊員を、より重視するべきなのではないでしょうか?

彼はこうも言っています。
いじわるで遠くに配置しているわけじゃない」と。
これが真実なのだとしたら恐らく、現場が遠い」と言っている隊員の方も我が儘や意地悪で答えている訳ではないのではないでしょうか?
純粋に、希望を伝えているだけ、なのではないでしょうか?

なぜ彼は、内勤者の言のみが会社の意図を組んだ正当な権利だと思い込んでいるのでしょうか?
なぜ、外勤者の言が労働者として当然の良好な労働環境を求める権利だとは理解できていなのでしょうか?

ひとえに勉強不足です。
ついでに言えば、立場として全く同じはずの労働者であるにも関わらず、使用者側の都合を代弁・代行してしまっているのです。
しかも、最悪な形をとって。

スタンフォード監獄実験というものがあります。
看守と囚人の役を与えてロール・プレイングさせると時間経過に伴い、看守はより看守らしく、囚人はより囚人らしく行動をする、といった実験結果です。
当該ブログ筆者は、未熟な社員教育における誤ったリーダーシップ・ロール・プレイングにより軽い洗脳状態にあると思われます。

なぜ、誤ったリーダーシップ・ロール・プレイングと言えるのか?
その答えを当該ブログ筆者本人が記述しています。

例えば、もの凄く仕事ができるが現場を選り好みするA仕事は並だが我が儘を言わずに配置に従うBであれば、会社にとってBの方が有益」と。

まったくもって、誤った認識です。
上記に照らし合わせば、まず、会社にとってみればAさん/Bさん共に有益な人材です。
仮に、仕事は並で現場を選り好みするCさんと仕事ができて現場配置に従うDさんであれば、少なくとも会社にとってはDさんのが有益であろうことが想像できます。
しかし、彼が例に挙げたAさん/Bさんは、共に会社に利益を生む可能性が高いですから、単なる現場配置への承諾/未承諾だけで有益か否かを判断するのは早計と言わざるを得ません。

また、会社(使用者)にとっての有益性においては甲乙付けがたい、とは述べましたが、当会としてはAさんの方が有益、とお答えします。

理由は簡単です。
警備業法第21条1項『警備業者及び警備員は、警備業務を適正に行うようにするため、警備業務に関する知識及び能力の向上に努めなければならない。 とあります。
勿論、これは努力義務です。


ですが、上例のAさんの説明をみてください。
仕事ができる、とあります。即ち、知識及び能力があることを証明しているのです。
では、Bさんの説明をみてください。
仕事は並、とあります。即ち、警備業法第21条1項にある努力義務が足りていない、と判断されます。

では、お客様目線、つまり、クライアントの現場において現場代理人が求める警備員はいずれでしょうか?
当然、Aさん、です。
当たり前ですよね?
お客様にとって、保安要員としてより質の高い警備員が配置された方が喜ばしいに決まっています。
現場を選り好みするかどうかなど、お客様の関心事ではありません。
等しく同じ労務単価を支払うのであれば、より良い保安業務を遂行できる警備員を求めるのは必然です。

警備業法的にも、また、お客様サイドにとっても有意義となるAさんよりもBさんを有益として優遇するのは、単に管制業務をする際の個人的な煩わしさからくる贔屓に過ぎません。
言い換えるのであれば、選り好みをしているのは、現場配属への承認/未承認をしている隊員さんではなく、管制業務に就く内勤者、つまり、当該ブログの筆者の方です。

当該記事のブロガーのような誤った考え方を持つ警備員や元警備員は、何も彼一人だけの特殊なものではありません。
1号警備、特に2号警備にはこの誤った認識が今尚、蔓延しております。

経験者ならではの真偽の混雑

重複いたしますが、警備業での未就業者による想像の、もしくは完全なるフィクションとして、小銭稼ぎ目的のアフィリエイト記事であれば特段問題ありません。
厄介なのは、なまじ業界をかじっているせいで記事の一部は事実となり、荒唐無稽なクリックベイト(釣り記事)にある一定の信憑性を与えてしまう可能性があるのです。

収入のような数字に関しては、その実態を知らない方にとっては調べようにも調べられません。
しかし、仕事内容や業務、資格ほか、業界特有の用語や知識に関しては、その単語で検索することができ、一定範囲内において裏が取れてしまう、つまり、リアルさを与えてしまう恐れがあるのです。

例えば、当該記事において、警備員の仕事内容の一つとして「幅寄せ(テーパー監視)」と記載しております。
実際に2号警備業務に存在するポピュラーなものですから未就業者や再就職希望者には一定の信憑性を与えます。
一方、十分な情報を持っている場合、カッコ内にテーパー監視と添えていることから、どこの業者に勤めていたのか、ある程度絞り込むこともできます。

記事の閲覧者は往々にして、自身にとって都合の良い内容のみをピックアップして記憶する傾向にあります。
であるからこそ、疑義の生じやすい刺激的な内容で煽るような記事の投稿、しかも、これが検索結果の上位に表示されてしまうような状況は、芳しくはありません。

警備業界を取り巻く昨今の社会情勢への認識不足

当該記事の最終更新日が2019年2月とありますから反映されていない、それ以前に労働環境を気にも掛けていない様子が覗えるのが、昼夜連勤による高収入、という言い回しに表れて。

実際、ごく最近まで、特に2号業務では新規求職者相手に“高収入”を謳っているケースが多く見られました。
その内容は、連勤をすれば月40万も夢じゃない、このようなニュアンスです。

通しや面交代など、確かに連勤を重ねれば、論理的には月収40万円台も可能です。
ですが、可能というだけの話であり、これは明らかな労働基準法違反です。
2号業務主体の警備会社では、大手・零細の隔てなく、このように明確な労働基準法違反に該当する内容を堂々と新任教育や現任教育の場で警備員指導教育責任者の有資格者が喧伝する光景が最近まで日常的に見られました。

このような状況が是正され始めた切っ掛けは、罰則付き36協定の施行とそれ以前から厚生労働省による時間外労働の上限規制に伴う警備業者への指導が入ってからです。
大手業者であれば2017年後期から指導が入り、平成30年度から各社が実験的に労働時間調整に着手し、翌平成31年度(令和元年度)から大手に限り、罰則付き36協定が先行して義務化(※4)されたのです。

※4:令和2年度より法人規模の大小に限らず、罰則付き36協定が義務化されます。

当該ブログ筆者が業界経験者であることは疑いようもありませんが、それだけに労働環境に関連する認識不足と業界全体に纏わり付く悪しき慣例を体現しているのが浮き彫りとなっています。

総括

労働環境の改善という点において警備業界に根深く存在している大きな課題の一つに、低賃金・低収入が上げられます。

国や自治体の統計データは基より、業界関連情報においても広く言及されている問題点として、給与の乏しさが課題となっているにも関わらず、全く相反するような誇大広告さながら記事として投稿し、あまつさえ、警備業にまつわる検索キーワードにおける検索結果に上位表示されてしまう現状というのは、実に問題です。

全警連ではこのようなデマやフェイクとも言えるような情報を精査し、これを止めることができずとも、より正確な警備業界の実態についてお伝えしてまいります。

警備業界で働く皆さんと、これから警備員として働いてみたい皆さんのお役に立てる情報を発信して行きますので、なにとぞ宜しくお願いいたします。

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